コラム

2024/08/21 コラム

優生保護法について

愛知県一宮市の鈴木泉法律事務所の原です。

優生保護法に関する愛知の弁護団に加入し、訴訟や一時金申請等、被害者救済の活動に取り組んでいます。

 

優生保護法とは

優生保護法は、1948年に制定された法律です。

法律で定められた者(以下、「障がい者等」といいます。)に対し、同意を得て、あるいは強制的に中絶手術や不妊手術を施すことができると定めた法律です。

1996年に法律は改正されましたが、強制手術を受けた被害者の救済はなされてきませんでした。

そのため、2018年以降、各地で訴訟が起き、2024年7月3日に被害者勝訴の最高裁判決が出されました。

 

優生思想とは

優生保護法が制定された背景には、優生思想という考え方がありました。

優生思想とは、優れた人間の遺伝子同士を掛け合わせることで、科学的に人類の進歩を促すことができるという考え方です。

国は、障がい者等を「劣った遺伝子」と決めつけ、「劣った遺伝子」を排除することにしたのです。

そして、国は、学校で優生思想の授業を行う等、国民に優生思想を定着させるための努力をしてきました。

また、手術のために病院に連れ出すに際しては、対象者の身体の拘束、麻酔薬施用、欺罔等を用いることも許されるとの通知を出し、積極的に手術を推し進めてきました。

手術そのものやそのあり方が重大な人権侵害であることは勿論ですし、障がい者等に対し、国として「劣った遺伝子」との烙印を押すことが、障がい者に対する重大な差別であることは言うまでもありません。

 

訴訟

被害者にとっては、とても繊細で、辛い思い出です。

手術は、夫婦を離婚に追い込むこともありました。

当時の差別的な社会状況もあり、被害者は、戦うことが困難でした。

その結果、被害者たちは、約50年の間、被害について沈黙を貫いてきました。

そんな中、2018年、優生保護法被害の最初の裁判が起きました。

その後、各地で訴訟が相次ぎ、2022年、愛知でも優生保護法被害の訴訟が提起されました。

優生保護法が憲法に違反する許されない法であることは明らかでした。

しかし、民法には、被害から20年で権利が消滅するという定め(除斥期間といいます。)があります。

裁判の争点は、この除斥期間によって被害者の訴えが退けられてしまうのかどうかでした。

裁判所によって判断が分かれていましたが、2024年7月3日、最高裁判所は、除斥期間を理由に権利が消滅したものとして国が責任を免れることは、著しく正義・公平に反し、到底容認することができないと述べ、国が責任を負うことが明らかとなりました。

愛知訴訟は、名古屋地方裁判所で勝訴し、現在、名古屋高等裁判所に係属中です。

 

一時金支給法

国は、2018年の最初の訴訟が提起された後、優生保護法の被害者(不妊手術を受けた者に限ります。)に対し、一時金320万円を支払う旨の法律を制定しました。

愛知県でも、一時金の申請をして、一時金を受け取っている被害者がいます。

愛知弁護団でも一時金の申請を扱っております。

私も含め、弁護団員は、全員が一時金の申請業務を経験しております。

手術痕が消えてしまっていても、一時金が認められた例もあります。

手術を受けたという方は、私宛にご連絡ください。

こちらのページもご覧ください。

 

今後について

一時金を受け取った被害者もいますが、一時金はその被害に比べて低額です。

今後、国は、被害者に対して、より充実した補償を行うための法律を制定すると思われます。

新たな法律ができた際には、これに基づく補償の申請も協力していきたいと考えています。

勿論、新たな法律を待つことなく、一時金の申請や、訴訟提起をすることも可能です。

一時金を受け取ったから、訴訟提起できなくなるということはありません。

遠慮なく、ご相談ください。

 

一刻も早く、被害者に対する十分な補償がなされることを期待します。